
私には米寿を迎えた母がいる。普段はケアハウスで一人暮らしをしているのだが、転倒したのか複数箇所を骨折しているため現在病院へ入院中である。東京から九州までタイトル通りざっと三百里(1,178km)のお見舞いだ。
母の性格は、いたって明るく前向きで余計な一言も多いものであったが、身体が弱ったせいか、めずらしく弱音を吐いていた。「私はこの歳までずっと人ば励まして応援してきたとけど、もう励まされるばっかいで、励しきらんごとなっしもうた。」(訳:ずっと人を励ましてきたが、最近は励まされるばかりで励ませなくなってしまった)
たしかに昔からポジティブで、一所懸命に父を励ましている姿を見てきた。今はリハビリの担当の方に励まされるばかりなのだと言う。それにしては「あんたご飯ちゃんと食べとるとね』「顔色よかやんね」と私への心配は相も変わらずやたらと多い。
帰り際、「もう杖なしで歩けるとよ」と母は右へ左へヨロヨロしながらも、杖を手放して病院の廊下を歩いてみせる。そんなめっきり小さくなった母に、「お母さん、私は励まされたよ」とそっと伝えて面会時間を終えた。
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